当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。当社グループはこれらのリスクに対処するため、リスク管理体制を整備し、リスクの集約・選定及びリスクへの対応を行っておりますが、全てのリスクを完全に回避するものではありません。また、以下に記載するリスクについては、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を、重要性の観点から取上げたもので、全てのリスクを網羅するものではありません。なお、文中における将来に関する事項は、当年度末時点において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、リスクマネジメント及びコンプライアンスに関する取組みを統括する「リスク管理委員会・コンプライアンス推進委員会」を設置し、リスク管理担当取締役が委員長を務めております。本委員会は、リスクマネジメントやコンプライアンスの重要項目の立案、重要性の高いリスクの設定、適切な対応、リスク顕在化時の情報共有や対策の実施といった役割を担っております。
重要性の高いリスクの選定にあたっては、外部環境・内部環境・業務オペレーションといった複数の観点からリスクを抽出し、評価を行っております。選定は、各グループ会社及び各部門にて行うと共に、グループ全体としての視点でも抽出し、優先度の高いリスクを特定しております。リスク管理委員会では、選定されたリスクの状況及び対応状況をモニタリングし、グループ全体でのリスク管理を推進しております。また、サステナビリティ課題に関連したリスクをグループ全体のリスクマネジメントの対象とし、対応を推進するため、リスク管理委員会とサステナビリティ委員会の連携を図っております。
(1) 医療制度の変更に関するリスク
当社グループの主力事業である調剤薬局事業、医薬品製造販売事業は大きな変革期にあると認識しており、今後の薬価基準や調剤報酬の改定によっては、当社グループの業績等が影響を受ける可能性があります。また、医療制度の大きな変更による新たな競争の発生等により競争力を維持できない場合、事業計画や業績等が影響を受ける可能性があります。
このような状況を踏まえ、当社グループでは、経営目標の達成に向け、医療制度の方向性や社会環境の変化をふまえた事業戦略を策定、推進しております。
(2) 消費税法に関するリスク
調剤売上は消費税法により非課税となる一方で、医薬品等の仕入は同法により課税されております。調剤薬局事業において当社グループは消費税等の最終負担者となっており、当社グループが仕入先に支払った消費税等は、販売費及び一般管理費の区分に費用計上されております。今後、消費税率が改定され、薬価基準が消費税率の変動に連動しなかった場合には、当社グループの業績等が影響を受ける可能性があります。
(3) のれん・固定資産に関するリスク
当社グループでは、M&Aを推進する中で取得したのれん・固定資産、及び出店により取得した固定資産は、対象店舗の業績悪化等により、回収可能性が低下し減損損失を計上することとなった場合には、親会社株主に帰属する当期純利益など業績に影響を与える可能性があります。なお、調剤薬局事業におけるのれん・固定資産の減損に関する重要な会計上の見積りの前提条件については、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。また、当社グループでは医療制度や社会環境の変化に対応すべくデジタルトランスフォーメーション(DX)への投資を拡大・推進しておりますが、医療制度改革や社会ニーズの変化と戦略との間に差異が生じた場合、追加での投資が必要となるか、または投資の回収可能性が低下し減損損失計上の対象となることで、業績等に影響を与える可能性があります。
このような状況に対し、当社グループでは、M&Aの活用を調剤薬局事業の業容拡大の有効な手段の一つとして位置付け、案件毎に十分な精査・検討を前提としたうえで、慎重に取り組んでおります。DXへの投資についても、医療制度改革や社会ニーズの変化を的確に捉え、慎重に投資判断を行っております。
(4) 調剤業務の安全性及び医薬品の品質・副作用に関するリスク
調剤薬局事業においては、調剤過誤が発生し、多額の賠償金の支払いや、それに伴う信用低下等があった場合には、業績等に影響を及ぼす可能性があります。このような事態を防止するため、医薬品安全使用のための業務手順書の遵守、医療安全研修の実施、専門性の高い薬剤師の育成、医薬品自動チェックシステムの導入や危険性の高い薬剤の重点的な鑑査の実施等、さまざまな対策を講じております。また、調剤業務での医療安全・品質管理向上に関する統括機能を設け、会社全体での過誤防止の取組みを推進しております。
医薬品製造販売事業においては、未知・重篤な副作用の発生や製品の品質上の重大な瑕疵により製品回収・販売中止等が発生した場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。製造販売を行うジェネリック医薬品は、先発医薬品でその有効性と安全性が確認されており、再審査を経て発売されることから、予期せぬ重篤な副作用が発生するリスクは小さいと考えられますが、発生可能性は皆無ではなく、GMPに基づいた製造・品質管理体制の強化・拡充を進めております。
(5) 法令・規制への抵触に関するリスク
当社グループの事業に関連する法令は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)、薬剤師法、労働者派遣法など多岐にわたります。例えば、調剤薬局事業や医薬品製造販売事業においては、薬機法関連法規等の規制を受け、各都道府県知事等による許可・指定・登録・免許及び届出が必要です。万一、違反等があった場合、監督官庁からの業務停止、許認可の取消等が行われ、業績等に影響を与える可能性があります。
また、医薬品製造販売事業において開発・申請した製造販売品目ごとの承認は厚生労働大臣から取得しておりますが、これらの承認が計画どおりに得られない場合、法令改正や諸規制の変更に伴う対応費用の発生、サービスの提供、製品の開発、製造、販売活動等に影響が及ぶことで、当社グループの業績等が影響を受ける可能性があります。
このような状況に対し、当社グループでは、法令及び関連する規制の遵守を極めて重要な企業の責務と認識し、経営の最優先事項の一つに位置付けて事業を推進しております。
(6) 情報システム、情報セキュリティ、個人情報管理に関するリスク
当社グループは、重要な事業戦略としてDX戦略を策定・推進しており、事業運営における情報システムの重要性が増しています。また、調剤薬局事業及び医療従事者派遣・紹介事業において、患者さまの病歴・薬歴や派遣労働者の経歴などの個人情報、及び全事業において営業上・技術上の機密情報を保有しています。このような状況において、サイバー攻撃等による機密情報や個人情報の漏えい、通信回線や機器のトラブル等による情報システムの停止等が発生した場合、被害規模によっては業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。万一、個人情報の漏えいがあった場合には、多額の賠償金の支払いや行政処分、それに伴う信用低下等により業績等が影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、これらの情報について厳重な管理を行い、サイバー攻撃等による不正アクセス、改ざん、破壊、漏えい及び滅失等を防ぐため、情報セキュリティに関する規定整備や各種セキュリティ管理施策の実施、従業員への教育等による情報セキュリティインシデントの未然防止と共に、インシデント検知ならびに発生時の対応力強化に努めております。
(7) 人材の確保に関するリスク
当社グループの事業戦略の遂行や事業の拡大において、人材の確保は最も重要な課題の一つであると認識しております。しかし、人材獲得競争の激化や人材の社外流出に伴う人材確保・人材不足の状況によっては、事業戦略の達成が困難となり、将来の当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
調剤薬局事業においては、薬機法及び厚生労働省令によって、薬局における薬剤師の配置人数に規制があります。このため、薬剤師の必要人員数が確保されない場合には、当社の出店計画及び業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 人権に関するリスク
当社グループは、医療を通じて社会に貢献する会社として人々の健康な生活を支える役割を担っており、人権の尊重は、当社グループの事業継続のための前提となる重要な基盤であると認識しております。事業を取り巻く環境の変化をふまえ、人権リスクが経営に及ぼす影響を適切に認識し、確実に対応していく必要があります。
当社グループでは、国際人権章典及び国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」に規定された基本的な人権を尊重し、ビジネスと人権に関する指導原則などの国際行動規範を支持し、これらの原則に基づく取組みを実施してまいります。「国連ビジネスと人権に関する指導原則」等をふまえ設定した「日本調剤グループ人権方針」に基づき、人権尊重への取組みを推進すると共に、当社グループの事業活動が直接的、間接的に及ぼす人権上の影響を評価し、具体的な対応を進めております。また、認識されたサプライチェーン上の課題については、「日本調剤グループ調達基本方針・サプライヤー行動規範」に基づき、お取引先を始めとする関係先と協力して取組みを行ってまいります。
(9) サプライチェーンに関するリスク
医薬品製造販売事業においては、世界情勢の動向、感染症や自然災害、調達先での事故の発生、ジェネリック医薬品業界の情勢等により、原材料及び商品の仕入の遅延・縮小、製品の製造及び供給が停止・縮小する可能性があります。また、一部の医薬品において、製造を外部委託する方式、あるいは製造販売元の医薬品を自社販売する方式にて市場への製品供給を行っておりますが、製造委託先の事情による契約終了、契約内容変更等により製品供給が行われなくなる可能性があります。これらの場合、当社グループの業績等へ影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、重要な原薬ソースの二重化や適正在庫の確保といった安定供給に向けた取組みを実施しております。
(10) 金利の変動、原材料市況に関するリスク
当社グループでは、主として借入金により資金を調達し、新規出店やM&A、設備投資などを行っております。今後の経済状況により、新規借入金利が大きく上昇し、支払利息が増加する場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、世界情勢や気候変動等により、原材料市況が大きく変化し、エネルギー関連費用、原材料及び資材価格の上昇が生じた場合には、ジェネリック医薬品の製造原価が増加する等、事業計画や業績等が影響を受ける可能性があります。
(11) 気候変動に関するリスク
当社グループでは、気候変動の関連課題を事業経営上の重要課題であると認識しており、将来的な気候変動を見据えた脱炭素社会への移行リスクとして、炭素税・排出権取引制度等の導入による事業運営コストの増加、原材料における規制や需給バランスの変化に伴う価格高騰、輸送コストの高騰、電力価格の高騰を認識しております。また、異常気象災害の激甚化による拠点の被災や物流網の寸断、感染症の増加など、将来的な気候変動が業績等に重大な影響を与える可能性のある物理リスクも想定されます。
こうした状況をふまえ、当社グループでは、代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会を設置し、気候変動問題に対する取組みを協議しております。気候変動が事業経営に及ぼす影響を認識するにあたり、IPCCやIEAが発表している長期的な仮説やシナリオを参照し、物理的及び副次的なリスクと機会の特定、その影響度合いと対応策の評価・考察を行っております。そして、『日本調剤グループ環境方針』を定め、サプライチェーンの各段階において対策を検討し、取組みを開始しております。
(12) 大規模災害、感染症の拡大に関するリスク
当社グループでは、大規模な自然災害の発生、重篤な感染症の広域での流行などにより事業運営が影響を受ける可能性があります。例えば、新たな感染症の大規模な流行が発生した場合、患者さまによる医療機関受診回避や、医療機関による外来診療の抑制・処方日数の長期化・薬剤師の派遣紹介需要の減少等により、事業活動へ影響が発生することが想定されます。また、当社グループの事業活動は広範な地域で行っており、事業のサプライチェーンも含めると、自然災害及び感染症発生時の被害を完全に回避できるものではなく、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対し、当社グループでは、事業拠点の分散、事業継続計画の策定などの対策を講じております。例えば、医薬品製造販売事業においては生産拠点を茨城県つくば市と徳島県徳島市に分散し、物流拠点も全国3拠点に分散するなど、災害等が発生した場合に備えた対応を行っております。また、オンライン服薬指導や電子お薬手帳の活用など医療DXへの積極的な取組みを通じて、利便性と医療の品質を追求し、患者さまに安心してご利用いただける体制整備を行っております。
(13) 技術革新によるビジネスモデルの変革に関するリスク
近年の新たな技術を用いたサービスや商品の新規展開、例えば、新たなオンラインサービスの利用拡大、AI活用の普及といった継続的な変化に対し、当社グループの対応が劣後する場合には、業界での競争力の低下につながり、業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、このような環境変化を機会としてとらえ、新たな技術を活用して事業の拡大に向けた取組みを図っております。
(14) 訴訟等に関するリスク、並びに特許及び知的財産に関するリスク
医薬品製造販売事業では、知的財産権及び不正競争防止法に十分に留意した製品開発を行っておりますが、ジェネリック医薬品の商品としての特性上、医薬品メーカーから特許訴訟を提起される場合があります。この他にも、当社グループの事業に関連して、訴訟等の当事者となる可能性があります。これらの訴訟等において、当社グループに不利な判断がなされた場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。