週刊!薬剤師ブログ

ジョブチャレⓇ体験記2023.01.27

病院スタッフ、患者さまとの関わりで学んだこと

日本調剤の社員として病院勤務を経験できる「社外ジョブチャレンジ制度」、通称「ジョブチャレⓇ」。平均1~2年病院に勤務し、幅広い視野を身に付けることができます。
今回はジョブチャレで様々な経験を積み、日本調剤の店舗で活躍を続けている門田さんにインタビューしました!

●ジョブチャレ中の業務内容について教えてください!

私が勤務していた病院は、病床数450床で、内科から外科まで幅広い入院処方を応需していました。地域周産期母子医療センターに認定されていることもあり、GCUやNICUの未熟児・新生児における処方も取り扱っています。

主な業務内容としては、セントラル業務・病棟業務・化学療法関連業務・外来業務の4つです。
セントラル業務では、電子カルテに入力された処方を発行し、各種検査値やカルテにおける医師の処方意図などをもとに処方監査を行い、問題がなければ調剤・監査、注射薬であれば注射をセットし、各病棟に払い出しを行っていました。
病棟業務では、入院患者さまの持参薬の鑑別や入院中に予定されている薬に関わる治療の説明対応をしました。入院中には、手術終了時など薬剤や治療の変更が起こるタイミングでの体調確認と変更内容の服薬指導を行い、退院時にも内服薬や副作用などの退院指導を行いました。
化学療法関連業務では、用量・速度・投与経路などレジメンが適正か判断し、患者さまの各種検査値・バイタルなどから投与が問題ないと確認できたら、治療スケジュールや期待できる治療効果、発現する可能性のある副作用やその対策について、患者さまへの説明を行っていました。
外来業務では、抗がん剤や医療用麻酔などのハイリスク薬剤を含む処方せんの払い出しを行います。外来化学療法室とも連携しており、「経口抗がん剤+注射抗がん剤」の組み合わせの場合、注射抗がん剤の説明を行うこともありました。

私の担当病棟は、呼吸器外科・消化器外科・耳鼻咽頭科・歯科口腔外科・整形外科・乳腺外科と幅広い診療科に携わらせていただきました。ジョブチャレを開始して半年が経過した頃から、外来がん治療認定薬剤師を取得したいと思いはじめ、主任薬剤師の方へ外来業務を担当させてほしいと相談したところ、頑張ってと背中を押していただき、外来業務の大半を私が担当させてもらえるようになりました。

●病院スタッフとの印象に残っている出来事はありますか?

肺がんの初回化学療法が開始となる患者さまがいらっしゃいました。当時は、免疫チェックポイント阻害薬が各種肺がんのレジメンに組み込まれて使用され始めたばかりで、どの組み合わせが最も患者さまへ効果が期待できるか手探りの状態でした。院内でメジャーであった組み合わせはカルボプラチン+ペメトレキセド+キイトルーダの三剤併用療法で、今回の患者さまも同様の治療を行うだろうと思っていたのですが、実際に選択されたレジメンは新規採用されたばかりのカルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ+アテゾリズマブの四剤併用療法でした。添付文書やインタビューフォーム、ガイドラインはもちろんのこと、各論文も読み込みましたが優位性を証明するものは見つかりません。あまりにも気になったのでレジメンを決定した呼吸器外科の主治医に相談したところ、せっかくだから直接会って話そうかとおっしゃっていただき、教授室に招かれました。

「君だったら何のレジメンを使う?」と聞かれ、優位性を示すデータが得られなかったので使い慣れている三剤併用療法の方が安全に投与を行えると考えますとお答えしたところ「僕もそう思うよ」と返されました。「ただこの患者さまは肝転移があり、肝がんに対してこの四剤併用療法の中のベバシズマブ+アテゾリズマブが第一選択として使用されていることを考えると、この方においては他のレジメンより効果が期待できるかもしれない。もちろんがん腫が違うから効果が期待できないかもしれないけれど、現時点では効果がないデータもないのだから試したいと思っている。今回初めての薬だけど副作用の管理や投与管理は薬剤師さんと看護師さんがやってくれるから心配してないよ」とのお言葉をいただきました。

医師と1対1で治療方針について話をする機会、医師の治療を決定するまでの考え方に触れる機会、医師の薬剤師に対する信頼を目の当たりにする機会と、直接話したこのたった15分程度の出来事は私にたくさんの経験を与えてくれました。
医師の処方意図を考え、その上で疑問を持ち疑義照会を行うことは、薬剤師の責務の一つですが、医師の処方意図を考えることは非常に難しいことだと思います。ある種の専門家がその分野の専門的知識をフル動員して導き出した回答に対して疑問を持つ、という行為を行うためには自分自身もその領域に関する専門知識を持ち、薬という違う角度から疑問に思うことを導き出す必要があると考えます。また、さらには患者さまのお考えやお気持ちなど様々なファクターがかかることもあり、処方せん一枚の重みを感じながら日々業務に向かっています。

●患者さまとの印象に残っている出来事はありますか?

外来業務を担当させていただいていたので、外来で薬をお受け取りにいらっしゃる患者さまとはほとんど顔馴染みで、多くの患者さまが門田さん、門田さんと慕ってくださっており、非常に良い環境で仕事をさせていただきました。ただ、外来業務は基本的に抗がん剤治療をされている方がほとんどのため、長く同じ病院に勤務していると亡くなられる方も少なくありません。病院で亡くなる方、ご自宅で亡くなる方、患者さまのご意向で様々ですが、ご家族の方が報告にいらっしゃる際にお世話になったからと主治医、担当看護師の中に呼んでいただき、一緒にお話をお伺いすることも多くありました。笑顔でお見送りしようと表情を作るのですが、すごく仲が良かった患者さまのご家族が「お父ちゃん、門田さん大好きだったもんね」と言ってくださった時は涙を堪えるのに必死でした。今でも病院で出会って別れた患者さまの顔を思い出し、頑張らないとと自分を鼓舞しています。

●ジョブチャレを終え、現在勤務している店舗について教えてください!

国立がんセンターの門前薬局で勤務しています。処方せんの9割以上ががんに関わる内容であり、より専門的な知識が求められる店舗です。昨年の9月に専門医療機関連携薬局の認定を取得し、これまで以上に病院との連携に力を入れています。月に1回、国立がんセンターの薬剤部と薬薬連携という形で合同勉強会を行ってるほか、年に数回、他職種連携会議にも参加しています。
店舗には、外来がん治療認定薬剤師が私を含め2名、社内がん認定薬剤師が4名在籍していることもあり、がんに関する新規治療や介入症例について話すことも多いです。和気藹々とした雰囲気で、分からないことがあればすぐに聞ける環境にあるので、若手薬剤師もメキメキと力を付けているなと肌で感じます。

●ジョブチャレの経験が現在の薬局業務に活かされていると感じることはありますか?

ジョブチャレ中に外来がん治療認定薬剤師の資格を取得したこともあり、現在の環境は自分の能力を最大限に活かせる場所だと思います。検査値から考える副作用の発現状況、処方意図から考える現在の疾患状況といったように、処方せんと患者さまのお話の聞き取りから、患者さまがどのような疾患でどのような治療を行っているか判断することが可能になりました。注意すべき副作用や患者さまが不安に感じるであろう事柄に注意を払いながら、患者さま対応を行っています。

トレーシングレポートやテレフォンフォローは病院ではできない、調剤薬局ならではの取り組みだと考えています。新しい治療が開始となり、次回受診までに生じる医療者の関わらない期間に介入することができます。私の場合、新規抗がん剤治療の開始時、支持薬追加時、用量変更時、医療用麻薬開始時は、1週間後を目安に電話にて体調確認を行い、症状に応じて支持薬の提案を行っています。患者さまから感謝のお言葉をいただくことも多く、来局の1週間後には毎回お電話をいただきたいとおっしゃる方もいらっしゃいます。がんに向き合わなければならない状況に不安を抱えている患者さまは少なくありません。精神的にも身体的にも負担が減らせるようフォローを行っています。

ジョブチャレで得た知識や経験、資格を活かして働くと同時に、店舗スタッフの育成にも力を入れたいと現在試行錯誤中です。認定資格取得のサポート体制を整え、店舗一丸となって患者さまに寄り添っていきたいと思います。

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